城下町長府(第1部)
私の中の城下町長府 児玉篤
内々の話しで大変恐縮であるが、私の女房は長府で生まれで、彼女の熱烈な要望に負け。五年前から此処に移り住んだ。当初「長府」に対して全く思い入れのない私であったが、最近その気持ちの変化に驚かされる。
初めての戸建てに気を良くし、犬を飼った。散歩の習慣が町との接点を生む。この町の風情は十年一日、ゆったりとして時を与えてくれる。日常の喧噪の中で忘れていた季節の花や木に足を止める私を知った。
ただ少し悲しい現実もある。今まで城下町の景観を支えてきた土塀が壊され、新しいものにつくりかえられていく。雨の日、泥がはねる舗装された道に土の匂いは消えた。生きる上で利便性、きれいごとでは済まされない。しかし、果たしてそれが最良なのかと、カメラの目を通して見た時、はたと考えてしまう。
景色は、ただそこにあるのではない。町も人と同じ時間を共有し、記憶してきた。それはこれからも続く。答えはいつでもかわらない。が、近い未来、看板や標識を避けたり、カメラワークを駆使することなく、ふらりと訪れた人が撮る写真に、城下町の薫り漂う町であってほしいと思うのである。
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